2018年10月29日月曜日

〈仕事〉の立ち位置

イラストを仕事にすると決めた時、
〈一生この仕事が、私を経済的にも精神的にも支えてくれるように〉
と願った。

目下、全然達成できてはいないのだけれど(苦笑)、
その願いだけは、寸分変わっていない。

けれど近年、わたしの中での〈仕事〉の立ち位置は、変化している。

30代までは、〈この仕事をするために、生きている〉と思ってた。本気で、思ってた。
40代の今は、〈生きているために、この仕事が必要〉と思う。本気で、思う。

生きてゆくって、大変だ。
誰にとっても、間違いなく、大変だ。
〈つらいことも、生きる醍醐味〉なのは真実だけど、
それは〈若さ〉とセットであればこそ、軽々しく口にできた台詞。

そんな至極あたりまえのことに、ようやく気づいた、よそじなかば(笑)。

わたしの描いた絵をみて、
たったひとりでも笑顔になってくれる人がいるのなら、
それがまんま、わたしの笑顔になる。

今のわたしにとって、
仕事は、〈生〉。
〈生〉は、〈感謝〉そのものです^^。

2018年10月2日火曜日

読書Crazy㉔ 永遠の〝浅草キッズ〟~「浅草キッド」「もうひとつの浅草キッド」


先に読んだのは、「浅草キッド」のほう。
浅草の老舗劇場「フランス座」での修行時代を綴った、ビートたけしさんの名作エッセイです。

冒頭からもう、きゅっと切なさに駆られてしまった。
20代半ばのたけしさんが辿り着いた昭和47年の浅草の街の空気感が、
今、私が歩いているこの街と、寸分変わらない匂いを醸しているようで。

若かりし日のたけしさんのひたむきさ、どこにもってゆけばいいのかわからない苛立ち、自虐、それから愛情、優しさ。
むきだしのそれらが、ひりひりと伝わってきて、痛々しくも、あたたかい。

「世界の北野」となっても、心の中には永遠の「浅草キッド」が、佇んでいるのかな。


もう一冊は、フランス座で出逢い、後に漫才コンビ「ツービート」として大ブレイクを果たすことになるたけしさんの相方、ビートきよしさんの作品「もうひとつの浅草キッド」
こちらも、すごく良かった。
たけしさんの「浅草キッド」が、主に修行時代からブレイクを果たすまでの時期を描いているのに対し、「もうひとつの浅草キッド」では、さらにその先まで綴っているのが興味深い。

終盤に、こんな場面があります。

「きよしさん、いろいろ悪かったね。」
~中略~
「ずいぶん迷惑もかけたし、お前のこと怒ったりずいぶん文句言ったりもしたけど悪かったね。でもよ、売れるために俺も鬼になってお前に文句言ったけどよ、許してくれ。」
相方のその言葉を聞いて、自然に涙が溢れてくる。

この言葉を聞いた時、きっときよしさんは、二人の日々を、書き残しておかねばという強い衝動に駆られたのではないかしら。


人と人との絆は、他人には解らない。
きれいごとでは片づけられないことも、いっぱい。
でも、最高の宝物であることは、間違いなさそう。

他人には解らないけれども、他人の心を動かすほど、素敵なものだと思いました。


「浅草キッド」 ビートたけし著 新潮文庫
「もうひとつの浅草キッド」 ビートきよし著 双葉文庫