2018年10月2日火曜日

読書Crazy㉔ 永遠の〝浅草キッズ〟~「浅草キッド」「もうひとつの浅草キッド」


先に読んだのは、「浅草キッド」のほう。
浅草の老舗劇場「フランス座」での修行時代を綴った、ビートたけしさんの名作エッセイです。

冒頭からもう、きゅっと切なさに駆られてしまった。
20代半ばのたけしさんが辿り着いた昭和47年の浅草の街の空気感が、
今、私が歩いているこの街と、寸分変わらない匂いを醸しているようで。

若かりし日のたけしさんのひたむきさ、どこにもってゆけばいいのかわからない苛立ち、自虐、それから愛情、優しさ。
むきだしのそれらが、ひりひりと伝わってきて、痛々しくも、あたたかい。

「世界の北野」となっても、心の中には永遠の「浅草キッド」が、佇んでいるのかな。


もう一冊は、フランス座で出逢い、後に漫才コンビ「ツービート」として大ブレイクを果たすことになるたけしさんの相方、ビートきよしさんの作品「もうひとつの浅草キッド」
こちらも、すごく良かった。
たけしさんの「浅草キッド」が、主に修行時代からブレイクを果たすまでの時期を描いているのに対し、「もうひとつの浅草キッド」では、さらにその先まで綴っているのが興味深い。

終盤に、こんな場面があります。

「きよしさん、いろいろ悪かったね。」
~中略~
「ずいぶん迷惑もかけたし、お前のこと怒ったりずいぶん文句言ったりもしたけど悪かったね。でもよ、売れるために俺も鬼になってお前に文句言ったけどよ、許してくれ。」
相方のその言葉を聞いて、自然に涙が溢れてくる。

この言葉を聞いた時、きっときよしさんは、二人の日々を、書き残しておかねばという強い衝動に駆られたのではないかしら。


人と人との絆は、他人には解らない。
きれいごとでは片づけられないことも、いっぱい。
でも、最高の宝物であることは、間違いなさそう。

他人には解らないけれども、他人の心を動かすほど、素敵なものだと思いました。


「浅草キッド」 ビートたけし著 新潮文庫
「もうひとつの浅草キッド」 ビートきよし著 双葉文庫

0 件のコメント: