2017年8月1日火曜日

読書crazy㉒ 「東京公園」

可愛らしい青春小説に出逢いました。
可愛らしいというのは、主人公含む20代のワカモノ達だけではなく(笑)、
彼らを取り巻く、すてきな大人たちへの賛辞でもあり。

主人公の圭司くんは、カメラマン志望の大学生。
ひょんなことから年上のサラリーマンと出会い、
年若い妻の行動を追いながら、こっそり写真を撮り続けてほしいという、
おかしな依頼を引き受けてしまいます。

被写体となる人妻・百合香さんをファインダー越しに見つめ続けるうち、
彼女に恋心を抱くようになってしまった圭司くん…。

心優しい友人や家族。さり気に見守ってくれる、周りの大人たち。
彼らとの触れ合いの中で揺れ動いた末に出した圭司くんの「結論」が、響きました。

〝自分のために生きることと、誰かのために生きることは、別に相反するものじゃない”…

「一緒に生きていくということなんだと思うんだ。暮らしていくのは別になってしまうのかもしれない。それぞれがそれぞれの場所で他の人と暮らしていくけど、生きていくのは一緒。だから、幸せな方向に向かっていってほしい。会ったときにいつでも、なんていうか、いつも通りに過ごしていたい。」

強いな。
そして哀しくて、切なくて、可愛い。

この物語の登場人物たちは皆、切なくて、可愛い。
人間らしい。

なにかに迷ったとき、ふと思い出して読んで頂けたら嬉しい1冊です。
きっと「幸せな方向」に、背中を押してくれるのではないかしら。

「東京公園」小路幸也 (新潮文庫)

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