”智に働けば、角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。
(中略)越すことのならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。...”
~夏目漱石・「草枕」の冒頭~
この一文とリンクして、画の学校の先生がこんなことをおっしゃっていたのを思い出します。
「これから生きてゆく中で、美しいモノが解るようになるということ。
それによって、人生が楽しくなるということ。
それが、アートを学ぶことの本当の意義だよ。」
ハタチと少しばかりだった当時のわたしには今一つ理解できなかったのですが、
この年齢になって、やっとこのときの先生の言葉が心に沁みるようになりました。
つらいことにぶち当たった時、いつも自分に問いかけます。
「つらいから、逃げちゃう?」
答えは、NO。
「じゃあ、どうする?」
...
「逃げないで、受け止める。頑張ってみる。
その過程が少しでもたのしくなるように、工夫しながら。
どうせやるなら、笑顔で乗り切ってゆけるように。」
そう。アートってきっと、そんな日々を応援してくれるモノなんです。
つらいとき、悲しい時、美しいものに触れると、心がほどける。
素敵なものに刺激を受けて、頑張るエネルギーが湧いてくる。
なにも、しゃっちょこばったものじゃない。
人と人とがエールを送りあうための、コミュニケーション手段...なのだと、
わたしは理解しています。
4 件のコメント:
ああ、おもしろかった。
きゅうる村さんへ。
ありがとうございます。
堅い話で窮屈かな?と思っていたので、おもしろかったと云って下さってすごく嬉しいです^^。
以前は、「アート」とか「アーティスト」という言葉を使うのが嫌いでした。なんか、エラそうな気がして(笑)。
でも、今回書いたようなものがアートなのだとしたら、めちゃめちゃ普通で、だからこそ尊いものなのですよね。そう思ったら、抵抗感がなくなりました。
全てのヒトが、アーティストなのだと思います!
漱石の文章は、与えられたその場で生きるという覚悟の話だね。
きゅうる村さんへ。
そのとおりだと思います。
”与えられたその場”は、覚悟次第でその人にとって最高の場所に出来得るところ...ですよね。
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