2013年8月15日木曜日

読書crazy⑭  「小さいおうち」「ひろしま」


中島京子さんの直木賞受賞作、「小さいおうち」。
いとう瞳さんの素敵なカバーイラストに魅かれて、内容は全く知らずに手にとりました。
 
戦前から戦中の十数年間を、とある裕福な家庭に女中として仕えた少女・タキの目を通して語られる物語。終盤は現代に舞台を移し、老女となったタキの遺した手記を、血縁者の青年が紐といてゆく...というストーリー。
 
ドラマティックといえば、ドラマティック。
けれど、時代を、場所を、人を、いつかのどこかのだれかへ置き換えたとしてもちっともおかしくはない、誰の人生にも普通に流れている日常、ちいさな事件、こころときめく瞬間、楽しいこと、悲しいこと...そのようなことが、淡々と。
 
戦争へと突き進む暗い時代を背景にしてはいるのですが、そんな中にも悲壮感の漂うことない、素敵な時間も確かに流れていたのだよ...というお話。
 
 
 
この小説を読んで、ふと数年前にであった写真集のことが頭に浮かび、本棚から取り出してみました。
 
 
「ひろしま」 石内都
 
この写真集は、イラストの仕事でお世話になった出版社の社長さんから「名作だよ」とご紹介いただいたもの。
 
広島の原爆で命を落とした方たち(多くは、若い女性たち)の身に着けていた衣服や小物たちを撮影した作品集。
 
初めてこの本を開いたときの感想は...不謹慎かもしれませんが、「わぁ...おしゃれ。」
 
無残に焼け焦げ、びりびりに破れ、黒い雨が染みつき...原形を留めていない衣類や装飾品。
 
直視できないような痛みと並行して、
ただ単純に、身に着けていた方たちのどんな苦境にあってもささやかなおしゃれをして、明日をも知れぬかけがえのない日常を楽しむのだという純真な想いが...わたしに、そんな感想を抱かせたのだと思います。
 
さきの震災を経てなおいっそう、訴えかけてくるものが。
 
 
大切なことを教えてくれた、この2作品。
 
たとえばこんな風に、
ひとりひとりの人間・自分とまったく同じ人間の日常に想いを馳せる、という切り口から、
平和とか、幸せとかについて...仰々しくでなく...
寄り添うように、共鳴するように、何か役に立つことを考えることができないかしら...。
 
 
「小さいおうち」 中島京子 著 (文春文庫)
「ひろしま」     石内都 著   (集英社)
 




2 件のコメント:

あずき さんのコメント...

最近は自分の本というより
息子の本に興味があります
まいこさまがおすすめする絵本も
今度紹介していただけたら嬉しいです☆

たかはしまいこ さんのコメント...

あずきさんへ。

では、そのうちおすすめ絵本特集をいたしましょう\(~o~)/

頓挫中(笑)の絵本出版の夢も、時間的な余裕が出来たらまた頑張ってみようかな...。